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風景と景観

  • pafumars
  • 4月4日
  • 読了時間: 2分

以前このブログで、景観という言葉・概念がどのようにできたかを調べていることを書きましたが、その成果を含む論文を本の中に収録してもらいました。日本美術史の井戸美里さんが編者となった論集『名所の誕生―「名」を与えられた風景』(思文閣出版)です(下図)。タイトルでわかるとおり、名所=名を与えられた風景がどのように生まれていくのかをテーマに、10人の著者の論文を集めた論集です。その中の最終章として、「風景と景観の使われ方の変遷」というタイトルの小論を載せてもらいました。

 その中ではブログで書いたような、景観という言葉・概念の発生とその定義をめぐる議論についても論じているですが、あくまで主題は風景と景観という二つの言葉・概念の使われ方の変容です。それを、1900年代から2010年代までという長いスパンで、それぞれの言葉を使った論文・記事を、データベースを使って統計的に分析してみたのです。ここまで全面的に統計的分析というのを使ったのは初めてです。いろいろ制約も多いので、どれだけ客観性が担保されたのか不安なところもあるのですが、分析結果はとても興味深いものが出てきたと思います。予想どおり、風景という言葉が1920年代あたりに多用されるようになるが、その後すたれて、それに代るように景観が、1970年代あたりから一挙に使われるようになっていったことがはっきりわかりました。ではそうした言葉の変化の背景にあったものは何だったのか。それこそが、ここでの分析の最も重要な論点となっています。実は、風景にも景観にも、本来の視覚的に受容されるものの価値を示すのとは別の使われ方もありえたのです。そのことがここでの数値的な変化に繋がっているようです。それはなんとなくわかってはいたことですが、統計的な分析からより具体的にはっきりと指摘するこができたのではないかと思います。いずれにしても、いままで日本の歴史研究ではあまりみられなかった価値を示す「言葉」に注目し、なおかつそれを統計的な分析から扱おうとした野心的(自分で言うのもなんですが)なものなので、ぜひご意見ご批判をよろしくお願いします。




 
 
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