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歓待インフラ

  • pafumars
  • 2024年6月6日
  • 読了時間: 2分

 テレビ番組(京都画報)の力を借りて、何十年ぶりかに大丸ヴィラを見てきました。大丸の社主だった下村正太郎が英国のリバティ百貨店のチューダー様式を気に入って、日本に帰ってきて建築家・ヴォーリズに設計を依頼して建設したという洋館。間違いなく、日本の洋館建築の中でも、最も優れたものの一つです。いまは公開されていないので、見ることができないのですが、室内も含めて子細に見学することができました。

 この洋館の特徴や質の高さは、いろいろなところに紹介されているわけですが、改めて見てみると、下村正太郎の単なる自邸というものではなく、ブルーノ・タウトをはじめ、内外の要人を招くためのもの(仕掛けと言ってもよい)だということがわかって納得しました。例えば、ステンドグラスには「S」の文字を2つ重ねたモダンな柄がはめ込まれていますが、これは下村正太郎のイニシャルなわけですね。チューダー様式の特徴を完璧に実現した意匠に見えて、よく見ると細かい所にそうした仕掛け(遊び?)がちりばめられています。そもそもハーフティンバーで作られているように見えて、中身はRCなわけで、そこに表われたチューダー様式とは、あくまで訪れた者に鑑賞してもらうための仕掛けとしてあったのだということがわかります。

 そんな体験をした2日後に、東京で、坂野正則さんらが主催する「歓待インフラストラクチャー研究会」というのに参加してきました。大田省一さんの「傀儡王権と歓待空間―仏領インドシナの王家を事例として」という発表を聞いて議論してきたのですが、この研究会のテーマというか発想そのものがおもしろいです。「「歓待」を一過性の娯楽や余暇ではなく、都市文化形成の主要な原動力、日常的基層行為として考察する」というのが趣旨なのですが、このように捉えることで、都市や建築についてこれまでの異なる歴史的解釈ができるようになるのではないか。

 そうなんです。大丸ヴィラも歓待インフラだと。これまでこの洋館について、建築的特徴とその質についてさまざまに調査されその成果が公開されてきましたが、なぜそうした質が生まれたのか。そこには、建てた下村の、「歓待」の思いがつまっているわけで、それに応えた建築家も含めて、そうした思いについても客観的に言語化して分析する必要があるはずなのだろうと。






 
 
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